【コラム】④脂肪吸引に使う機械の種類とは？（2023年3月26日）

前回の続きです。

第４章　－脂肪吸引に使う機械の種類とは？－

では、どのような機械が脂肪吸引に使われているでしょうか。

脂肪吸引というとストローのような機器でちゅーと脂肪を吸うのをイメージされる方もいるかも知れませんが、実際の脂肪組織は結構硬いです。サーロインステーキの上の方についている脂をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。そのため、脂肪組織を壊して吸ってくる必要があります。それにはどのような機械を使うのか、分類から見てみましょう。なんと分類が５種類もありますね。ちなみにここで出てくるリポサクションというのは脂肪吸引という意味です。順番に解説していきましょう。

①吸引リポサクション（Suction-Assisted Liposuction, SAL）：

SALは、一番古典的な脂肪吸引の方法で、空気圧で脂肪を吸引します。シリンジ法と呼ばれる方法はここに分類されます。使うのは大きな注射器のみです。あるいは、陰圧をかけるポンプを使うこともあります。大掛かりな機械を必要としないので、安く施術できるメリットがありますが、注意点もあるのでそれについてはあとで説明します。

②超音波アシステッドリポサクション（Ultrasound-Assisted Liposuction, UAL）：

UALは、超音波エネルギーを使用して脂肪細胞を乳化（液状化）させ、その後カニューレで吸引します。有名なベイザーリポという機械は、このUALの一種です。

③パワーアシステッドリポサクション（Power-Assisted Liposuction, PAL）：

PALは、機械式に振動するカニューレを使用して、脂肪細胞を剥がしやすくします。この方法で使う機械は、アキーセル、パワーエックス、マイクロエアなどがあります。

④レーザーアシステッドリポサクション（Laser-Assisted Liposuction, LAL）：

LALは、レーザー光を使用して脂肪細胞を破壊し、液化させます。その後、カニューレで液化した脂肪を吸引します。スマートリポ、スリムリポ、クールリポといった機械があります。

⑤ウォータージェットアシステッドリポサクション（Water-Assisted Liposuction, WAL）：

WALは、高圧の水ジェットを使用し脂肪細胞を剥がします。その後、カニューレで吸引します。この方法は、周囲の組織へのダメージを最小限に抑えるとされています。ボディジェットという機械があります。

さて、分類を説明したとこで、結局どの方法が良いの？ということになりますよね。②〜⑤の方法について比較した論文は色々あり、それぞれメリットデメリットがあって決定的なものはないのですが、概ねどれも効果は良いです。患者様がどの機械を選ぶかというより、どちらかというとやる側の好みというところが大きいでしょう。その中でも②の超音波アシストで使うベイザーリポは皮膚のタイトニング効果がありたるみが出にくいため、当院ではこれを採用しています。

さて、この中で注意が必要なのは①の吸引リポサクションです。この方法は特別な機械を必要としないため、あまり脂肪吸引の症例数が多くないクリニックで使われることが多いです。裏を返せば、脂肪吸引をたまにしかやらないクリニックでは脂肪吸引にしか使わない高額な機械に投資はできない、ということです。医師が技術を習得したり維持するのにはたくさんの症例数が必要ですので、シリンジ法を行っているクリニックでの脂肪吸引はお勧めしません。（もちろんシリンジ法を極めたシリンジ法の神のような先生もいるとは思いますが。）

またシリンジ法は手動で脂肪吸引をしていくわけですので、他の方法に比べて手術時間が大変長くなります。例えば当院で太ももと二の腕のベイザー脂肪吸引をすると2時間ほどで手術が終わりますが、シリンジ法でやっているクリニックでは５時間以上かかったりします。手術時間が長ければ麻酔量も多くなり身体への負担も大きくなりますので、そういった面からも避けたほうが良いと思います。

続く